【短編】俺と鬼畜でカワイイかまいたち
背後でドアの閉まる音が聞こえたから既に手遅れだとは思うけど、いやマジでサドル片手に何かと戦う奴だと思われたままなのはどうにもシャクだ。
「戻りますよ。花壇に」
「は?花壇に戻る?」
何で今更?
尋ねようとはするが、すぐに合点がつく。
「水をやりに行くのか」
「そうです。それと、もう一つ。私達にはやる事があります」
「へいへい。わかってるよ」
言われねぇでもな。
昇降口を通り過ぎ、校庭へと続く道を途中で校舎に曲がり新校舎と旧校舎を繋ぐ渡り廊下のアーチをくぐり抜け。
金網の突き当たり。そこが花壇である。
花壇には花弁を失った花が静かに主人の帰りを待っていた。
「結局、犯人はわからなかったな」
はぁ全部ムダ骨か…。
「そうでもありませんよ」
「は?」
刹那、後頭部に衝撃が走る。
衝撃に押し倒されて、ろくな受け身も取れないまま顔面から地面に飛び込む。
「痛…」
鈍器で殴られた、のか?
クラクラしながら殴られた後頭部を押さえ、その手のひらを眼前に持ってくると、夕日の赤とはまた違った赤が手を朱に染めていた。