【短編】俺と鬼畜でカワイイかまいたち
「来ていただけたみたいですね」
俺の惨状など歯牙にもかけず堺はいつもの口調で俺の背後に話かける。
「…君の頼みだ。断る理由がないよ」
……クソが。人様の頭をいきなりぶん殴るなんてどこのどいつだ?
振り向いてそいつの顔を見てやった瞬間。
今度は脇腹を爪先で蹴り飛ばされた。
防御なんか出来るわけもなく、無様に地面を転がる。
「う……痛ぁ」
激しい痛みが脇腹。それに後頭部を襲う。
「で、あれを殺せばいいのかい?」
憎々しげに俺は声の主を睨む。
少し嗄れた声。
それだけでそいつの歩んで来た人生が俺達の2、3倍は多い事を想像出来た。
事実、そいつは先ほどまで俺達と会話していた用務員のオッサンなわけで。
ハアハアと僅かに息を切らし、右手には木杭打ち用の大きな金槌。
ぶらりと下げられたそれからは俺のものと思しき血が滴っている。
このオッサンが殺人鬼だと言われれば間違いなく信じる。
まあ今の段階でも殺人未遂犯なのだけどさ。