【短編】俺と鬼畜でカワイイかまいたち
顔はこちらに向けず、けれど俺には堺の表情が手に取るようにわかる。
「あなたの靴が教えてくれました」
靴?
見れば確かにオッサンの靴には土汚れがついてはいるが。
「この汚れは職業柄の汚れさ」
「はぁ」と、特大のため息がオッサンに向けられた。
「あなたもゴミカスに劣る有機物ですね。一回人生を精子からやり直したらどうですか?」
「なん、だと…」
「私が言ったのは靴の裏の事です。あなた方の過ごすあの豚小屋の床に残ってた足跡。そこの落とし穴に残ってる足跡は見た目だけですが一致すると断言できます」
「……」
「それにあなたはこんな事も言ってました。『その時間は』とも。私、時間帯は言ってませんよ?」
オッサンは黙り込む。が握られた鎚は戦慄いている。
「こんな初歩的なミスをやらかすだなんて。だからあなたは童貞なんですよ」
「誰が、童貞だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
怒りかそれともこんなガキに小馬鹿にされた恥ずかしさからか顔を真っ赤にしてオッサンは背を向け続ける堺に突進する。
本当に、世話が焼ける。
オッサンの行く手を俺とサドルが阻む。
やべー。目がちょーやべー。