【短編】俺と鬼畜でカワイイかまいたち
「堺!?ムリ、マジムリ!!もう限界!!そっから離れてくれ。守れる気がしない!!」
ジリジリとオッサン、俺。それと堺の距離が詰まっていく。
オッサンの血走った目。それから汚い歯並びの隙間から漏れる荒い息が、相対的に俺のピンチっぷりを物語っている。
「用務員のおじさん」
その声は背後からした。
「そんなに私とセックスがしたいですか?」
淡々と、俺とオッサンの鍔迫り合いなど眼中にないように。
立ち上がる気配。
あぁ。やっと本気を出してくれる。
俺は力の限り鎚ごとオッサンを吹き飛ばし距離を空けた。
「……遅い。俺が死ぬ所だった」
「いつも言っているでしょう。死ね、と」
ちょっとくらい俺を気遣ってくれてもバチは当たらない気がするんだけどな。
「さて、前にも言いましたがおじさん。私には好きな人がいますので私の事は諦めてください」
へ~。意外。堺みたいな人格破綻者でも好きな奴いるんだ。
今、心読まれたら殺されるな。間違いなく。
そんな思考を垂れ流していると。
堺がブレザーの内ポケットから黒いモノを取り出した。