冬がとける日
蝉の声が鬱陶しく耳にまとわりつき、
汗ばんだシャツが肌にまとわりつく。
私は、一学期のうちに持ち帰らねばならない様々なアイテムたちを終業式の日にフル装備して、ギラギラと太陽が照りつけるコンクリートの上を歩いていた。


体操服、上履き、朝顔の鉢植え、漢字と数学のドリルに、習字セット、絵の具セット、そして物質的な重さは余り気にならないが、そのものが内包する「重さ」は全アイテムの中でぶっちぎりの「夏休みの友」。

この、友達になった覚えもないのに、友を主張する厚かましい存在は、先生たちの策略で満ちていた。
まずドリルの宿題を課している。
習字の宿題に絵の宿題。
そして朝顔の観察日記の宿題。今年はおまけに、自由研究がくっついて来ていた。
朝顔とは別に何かを研究しなければならないなんて、みな絶句していた。


このように、学校に置き去りにしたい重い重い悪魔のアイテムたちを、全て持ち帰らなければ、宿題が出来ない仕組みになっている。



授業で汚した体操服を夏休み中放置していればカビが生えるだろうし、
上履きに関しては昇降口に先生とゆう監査の目が光る。
このようなことを5年も繰り返していれば、
6年目には皆学習能力が付き、一週間程前から計画的にアイテムを持ち帰っているのだ。
しかし、
私は当時からまったく学習能力がなく、
6年連続で終業式にアイテムをフル装備していた。


魔王退治に行く勇者だってもう少し軽装だろう。

照りつける太陽に悪態を付きなが、私はヨタヨタと帰路辿っていた。


宿題は計画的に終わりにして、夏休みの後半はたっぷり遊ぶんだ、と言う漠然とした計画をだけを立てた、私の夏休みは、
ラスト一週間を切ってまだ、朝顔の観察日記を除きほぼフル装備で宿題が残っていた。


朝顔は枯れてしまっては元も子もないからと、頑張っていたが、
そちらに気を取られ過ぎて他に手が回らなかった…
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