冬がとける日
母は父の死の知らせを聞いても、
そのあとの通夜や葬式においても、

母は涙を見せず、ただただ凛と立っていた。

泣かない母に対して、その気丈な振る舞いが健気で美しいと言う者、

逆に冷たいと言う者。

色々な人が目の前を通り過ぎて行った。


その人たちを前にしても真っ直ぐと立つ母は綺麗で、

違う世界の住人のような気がした。


涙1つ浮かべない目は、だらしなく笑う父の遺影でも、好き勝手言う弔問客でも、
隣りに立つ私でもなく、
何処か遠くをずっと見つめ続けていた。

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