冬がとける日

アルバイト代を溜め込んで、
奮発して買ったブランド物のマフラーは、
持ち主不在のまま寒空の下、私の心をより一層凍えさせる。


二股ぐらいならまだ頑張れた。
……と、ゆうか殴るくらい出来た。


しかし、
六股とは…。

気付かない私も私だけど。


「ゆきは、6人中3番目だよ。大丈夫。」

と言った彼の顔がちらつく。


3番目って…


いいのか、悪いのか。


光源氏の世界なら、きっと良い方に入るのだろう。
しかし、時は21世紀。

そんなハーレムを許せるほど女は寛容ではない。

第一彼は、やんごとなき身分の方でもない。


ただ、
ちょっと年上。
ちょっと一流商社マン。
ちょっと高学歴。
ちょっと背が高い。
ちょっと…、
いや、かなり顔がいい。


大学生の私には、夢のような相手だった。

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