冬がとける日


なるほど。と、和美は感じた。


そうかバスで見かけたのか。

そりゃ知っているはずだ。

ただ朝は眠っているか、本を読んでるかだから、
周りに気付いてないんだよね。

「ああそうだったんですか。なんかすみません。
じゃぁお友達になったついでに、好きな太宰治の本と、
あと数学のヤマを教えて下さい。
私の名前は、白須和美です。二高の二年です。」


和美は笑顔で会釈した。


美少年もつられて笑う。
「ボクは、竹下雄一です。一高の一年です。よろしく。
数学のヤマは任せて。オレ数学得意なんだ。
あと好きな太宰治の本は「ヴィヨンの妻」かな。和美さんは?」


「よかったー。あたし数学からきしなんだ。何のためにやってるか全然分かんないの。微分なんか出来なくったって生きていけるじゃない?
てか、私後輩に数学教わるのか。情けないな。

太宰治だったら「津軽」が好きかな?一度行ってみたいの。太宰治の故郷に。」


一高と二高とでは、和美たちの乗る駅に向かうバスでは、
一高の方が先に着く。
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