冬がとける日
バスが一高の近くに来たとき、
雄一は和美に数学の教科書を返し、

「ヤマ張っといたからあとで見てみて。あと、オレ明日も明後日もこの時間のバスに乗るから。
じゃオレ行くね。また。」


そう言って、降りていってしまった。


和美は何も答えなかったし、
明日も明後日もこのバスには乗らないかもしれない。

しかし雄一の言葉から、
和美がこの時間のバス以外には乗らないというような確信が感じられたし、
何より和美自身も、その選択肢以外ないような気持ちになっていた。


走り出すバスに向かって雄一が手を振っている。

和美はなんだか恥ずかしくなり、ぎこちなく手を振り替えした。

「また明日。」

そんな雄一の声が聞こえてくるようだった。
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