冬がとける日
こいつのデリカシーがないところが多分一番嫌いだ。

正樹の話を聞いていたら、俊之さんとの思い出が走馬灯のように巡っていく。
告白されたこと、
ずっと見ていたこと、
大好きだったこと、
買ったマフラーが高かったこと、
まだ捨てられずにとってあること、

思い出したら涙が溢れてきた。


「どこがって、全部よー!!
なのに、なのに、六股って、三番目って、だったらなんで告白なんかしてきたのよー!!」

私はわぁわぁ泣き出した。


みなチラチラこっちを見ている。

事情を知らない人たちから見れば、
別れ話がこじれたカップルにし見えまい。


正樹はギョッとして、
私の肩を掴み謝ってきた。

「まじ、ごめん。いやなんか、お前なんかにあいつはもったいないって…
って逆だ。
あいつなんかにお前みたいないい奴はもったいないって。ほら泣き止め。なんならオレが殴ってきてやろうか?」

こいつのこういうところが好きだ。

私の涙は決壊したダムのように流れ続けていた。


「もうさ、そいつ殴りに行こう。んで、お前はオレみたいな良い男見つけろ。てか、オレにしろ。」

そう言う、正樹に抱き締められた。

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