冬がとける日
しかし、いつもの和美とは違う。
今日は朝、雄一にヤマをかけてもらったのだ。


何故、そこが出ると予想出来るのかはさっぱり分からなかったが、


綺麗な字で書き込まれた、

数学の教科書は万能な頼もしい存在になっていた。


「ねぇ和美、何、さっきから教科書とにらめっこしてるのよ。
一緒に諦めようって。
ね?友達でしょ?」


女とゆう生き物は、
人の足を平気でひっぱり、

そしてそれを一切悪びれない。


たかが数学のテストだが、

そういった所に、女特有のなんたるかが出てしまうのだ。



和美は、何故か教科書を渡したくはなかったし、
数学のテストを諦めたくもなかった。


早苗に意地悪がしたいわけじゃない。

頭良いやつがヤマかけてくれたから、頑張ろうとかゆう真面目な理由でもない。



ただなんとなく、人に見せたら減ると思った。

まだ数十分の交流しかない二人の時間が砂時計のように、サラサラと落ちていって消えてしまう気がした。


そして、なんとなく雄一の為にも数学のテストを頑張りたかった。


それにしても、一高生とは言え、一年生で二年生の数学のヤマがはれるなんて。

相当勉強してるガリ勉くんとしか思えないのだが、
雄一からはそんな感じはしない。
運動部で汗を流す姿の方が似合うイメージ。


いったいどんな子なのだろう。
和美はなんとなく、ただなんとなく雄一が気になっていた。
いや、多分確実に。
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