冬がとける日
私が何気無く声を掛けた時、
振り返った彼の顔が驚くほどひきつった。
今までこんな顔見たことがない。
いや、訂正。
確か、昔見たアメリカ映画で主人公が宇宙人と遭遇した時に見せた顔と似ている。
あまりのオーバーリアクションに白けた思い出がある。
まさにその顔。
まさに未知との遭遇だ。


そして、辛うじて彼が発した言葉が、
「な、なんで…」


私はまだ状況を掴めていなかったが、
彼の向かいに座るフィフス・チルドレンは、
みるみる顔を赤くし、
暴走しはじめた。

「なんなのよ、この女!!」


きっと癇癪持ちの方なのだろう。
ヤキモチ焼きで、独占欲が強いタイプと見た。


すると彼はいつもの堂々とした雰囲気の殻をあっという間にひっぺがし、

「ち、違うんだ。ゆき!!
彼女は5番目で、キミは3番目なんだ!!だから、大丈夫なんだ!!」


店内の視線が一斉に集まるのが分かる。
皆一様に、何が大丈夫なんだという疑問を抱いているはずだ。


私がその刺さるような視線と疑問を受け止め、唖然としていると、
フィフス・チルドレンが引き続き戦闘能力全開で彼につめよる。


「何よ、5番目って!!
いったい何人いるのよ!!」


彼は、しまったという顔をして、
いや本当に「しまった」という顔はこれなのだろうと、図解付きで広辞苑に載せても良いだろう、顔をした。


「いや、その…ろ、6人…です。」


明らかに自分より年下であろうフィフス・チルドレンに向かって敬語になっている。
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