冬がとける日
和美と早苗、雄一と井坂の四人で遊ぶ回数も増え、


雄一の指導のおかげで、和美の数学は成績が向上した。


トニーには誉められたが、早苗にはカンニングを疑われた。



そんな風に過ご、夏が来た。


もうすぐ夏休み。


四人で何処かへ行こうかと、計画をたてたりしていた。


しかし、何事も上手くいかない。

その日も明後日からの夏休みに備え、
駅前の喫茶店で、計画を話し合っていた。


雄一がトイレに行ってすぐ、
早苗が家に電話をしてくると、席を立った。


テーブルには和美と井坂だけ。

思えば雄一と二人になることはあっても、
井坂とはなかったなぁと、
久しぶりの空気になんだか気まずくなっていた。


カララン。
グラスの氷が解けておちた。

「あのさ、お前、最近どうよ?」

沈黙を破ったのは井坂だった。


「どうって…。いつも通りだけど。」


「いや、だからさ。卒業したらお前どうすんの?
家継ぐの?」


家。


和美の家は、由緒正しき……
か、どうかはわからないが農家だった。


跡取りが欲しかったのだが、
和美の他に妹がいるだけで男の子には恵まれなかった。


だからだろう。


和美の母は、お婿さんを取って家を次いで欲しいと言っていた。
和美自身、そうするものなのだろうと、何となく考えていた。


「どうしようね。
とりあえず就職して、家のことはあとで考えるかな?」

和美はテーブルのアイスティを飲みながら答えた。


「あのさ、オレ次男だし。
お前んちに婿に入っていいと思ってるんだ。
その、だから、オレが大学を出たら籍を入れないか?」

唖然とした。


あんぐり。

「え?
何言ってんの?冗談きついよ?もう。」


和美はまたアイスティに口をつける。


「オレは本気だ。
中学の時から好きだった。
考えてみてくれるか?」


真剣な井坂の顔が見れない。


和美はただただアイスティを見つめていた。
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