冬がとける日
「なんだ、電話だよ。」


私は携帯に出た。


近くでは、オンボロ車に乗った正樹がタバコを吹かして待っていた。

顔には面倒なことに首を突っ込んだなぁ。


という表情。


「はい、もしもし…」


受話器の向こうから、聞こえてきた言葉に、私は気絶しそうなった。


終話ボタンを押す。


と、その場にへたりこんだ。


それを見ていた正樹が、
降りてきて声を掛けた。


「どうしたんだよ。
まさか例の商社マンでより戻そうなんて話なら、振り回されたオレ、怒るぞ。」


正樹がしゃがんで、私の顔を覗き込む。


多分、私の顔が蒼白だったのだろう、
正樹は急いでタバコを消し、
私の肩を掴んで、
「どうした?」

と言ってきた。


私は、涙が溢れてくる中、辛うじて言葉を発した。


「お母さんが、お母さんが、
倒れたって。病院に運ばれたって。
今、救急隊の人から連絡が…」
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