冬がとける日
その後のフィフス・チルドレンの行動判断はすさまじかった。

最初は私を浮気相手と見ており、私への攻撃体制をとっていたが、
私がサード・チルドレン、自分がフィフス・チルドレンであると分かると、
いくら順位が高いとはいえ、ファーストではないと言うことで、
私を敵ではなく、同盟国と見なす。

そしてその、猛りきった怒りの矛先を彼にピンポイントでぶつけてきた。


その姿を見ていたら私の怒りは覚めていった。

まぁいいか、この女より上だし。
という、ちんけな優越感の為ではない。


彼の胸ぐらを掴むフィフス・チルドレンの指にも私と同じブランドの指輪が輝いていたから。


私が彼に声を掛けた時、その左手に見えた指輪を目敏く、瞬時のうちに観察し結果を出したから、フィフスは最初からあんなにキレていたのだ。


そんな指輪で同盟関係を結ばされている私たち。
私とフィフスの他に同盟国は4ヵ国もある。
きっと彼女たちの左手にも私たちと同じ指輪が輝いているはずだ。

そんな指輪を自慢していた私がなんだか情けなくなり、怒る気力もなくなってしまったのだ。


私は出口に向かって歩き出す。
フィフスに胸ぐらを捕まれ捲し立てられる彼を見る者。
出口に向かう私を見る者。


様々な視線が交差する。
私は自分が買った明らかにプレゼント仕様である包みをコートの中に隠し、姿勢良く店をあとにする。

格好よくここを去りたい。


一瞬でも彼が追ってきてくれるかもしれない、と思ってしまった私の気持ちを置き去りに、
私は冬の街に出た。

店内ではまだ乱闘が続いているだろう。

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