冬がとける日
母はただたんに足の骨をポッキリと折っただけだった。

「ただ」
ではないのだが、「倒れた」
と、聞いていたから、てっきり・・・


「心配させないでよ。あたしもうお母さんに会えないかと・・・」

緊張が解け、ベッド近くの椅子にへたり込んだ。


「そんなの知らないよ。あんたが勘違いしたんでしょーが。
まったく、母親を一度は殺すなんて、親不孝な娘だね、まったく。」


笑う母は朝見た母と同じで、安心する。
よかった。大したことなかった。

正樹と顔を見合わせて笑った。

するとそこへ、看護師さんが入ってきた。


「はーい、葛城さん、お加減いかがですか。
娘さんが来てくれてよかったですね。」

やけに子供扱いされる母が面白い。


看護師さんは、私を見て、
「ちょっと先生が呼んでいますので、お願いします。」



入院費や治療の問題だろう。

ただ骨を折っただけなら、直ぐにでも退院できるし、
仕事にも復帰できる。


「じゃあ、お母さん少し待ってて。
正樹、ありがとう。もう大丈夫だよ。」


母は手を振って私たちを病室から送り出した。


正樹は私に着いてくる。


「よかったな。いや、もう安心した。
じゃあ、ここまで来たついでだし、待っててやるから先生のとこ行ってこいよ。」


私は正樹と別れ、言われた部屋へ急いだ。
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