冬がとける日
「やんなっちゃうよ。お母さん、目だめなんだって。

死んじゃうわけじゃないから、いいけどさ。
目、見えなくなるんだって。
その前に旅行とか映画とか連れてかなくちゃねー。」


運転する正樹に出来るだけ軽く伝えた。


けど、私は涙ぐんでいたんだと思う。


正樹は車を路肩に止め、
私を抱き締めてくれた。


「お前さ、悲しいときに笑おうとすんな。見てて辛い。
辛いなら、不安なら、不安って言え。
そんでオレや周りに頼れ。1人だなんて思うな。」


正樹の腕の中が暖かくて、気が緩んで、
私は泣いた。


わんわん泣いた。



正樹はずっと黙って私を抱き締めてくれた。


正樹、ありがとう。


私と母の戦いは始まったばかりだった。
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