冬がとける日
いつものバス。


いつもの時間。


夏休みに入り、学生がいなくなったバスはガラガラだった。


雄一はいつも場所に座っていた。


「おはよ。」


雄一は読んでいた本を閉じ、
和美に気付く。


「おはよ。昨日はオレが帰ったあとどうだった?親父さんとか怒ってなかった?
年下なんかとーって。」


「なんで?お父さんもお母さんも雄ちゃんのこと気に入っちゃって。
お母さんなんか格好いい格好いいって連発。

すっかりうちでもアイドルくんだよ。」


和美は雄一の隣りに座り昨日の顛末を伝えた。


和美が彼氏が出来たことを伝えたら、

連れてこい、連れてこいのオンパレード。


付き合い出してまだ一週間だったが、
和美は雄一を家に招待した。


小さな田舎町ということもあり、
初対面ではなかったのだが、
母も父も雄一をすぐに気に入った。


まず顔がいい。
あいさつもしっかりして、利発的な対応。
加えて一高生というブランド。


ビートルズじゃないが、
一歳くらいの年の差なんて何の問題にもならなかった。


娘の彼氏として申し分ない存在と認識。


今日のデートも笑顔で送り出してくれた。


とくに和美の父が雄一を気に入り、
早く酒が飲める年にならないかと、
うずうずしていた。
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