冬がとける日
夏休みが開け、秋が近づいてきた日曜日
和美は雄一といつものようにデートをしていた。


「どうした?和美、元気ないよ、今日。」


雄一は和美をのぞきこむ。


「うん…。あのさ、雄ちゃん。
あたしたちのこと、井坂に言った?」


和美は雄一に訪ねる。


「ああ…うん。
井坂先輩には言った方がいいかなって。
オレから言うのもおかしいんだけど、
なんか和美に言わせるのもアレだなって…。
勝手なことして悪かった。
先輩に何か言われた?」


雄一は申し訳なさそうにうつむく。


「そっか、やっぱり雄ちゃんか。
いやううん。何も言われてないよ。
たださ、井坂にあんなこと言われて宙ぶらりんにしてたから、気になってたんだ。
雄ちゃんが言ってくれて助かったのかもしれない。
ありがとう。」


和美は笑った。


「いや、オレ、ありがとうなんて言ってもらえる身分じゃない。
本当は、早く和美を独り占めしたくて。
告白したのも井坂先輩が先で、出会ったのだって井坂先輩の方が先で、
オレよりたくさん和美との思い出持っていて…
オレ、和美と付き合ってるのに焦ってたんだ。井坂先輩格好いいから。
だから、オレ…あてつけみたいに先輩に…」


雄一は耳まで赤くしてうつむいている。



和美は雄一に抱きつく。


いとおしさが増す。


「いいの、いいの。
本当に何て言って伝えるべきか分からなかったし。
返って本当に助かった。
ありがとう。
それよか、あたしって信用ないのね。」


和美の雄一も笑った。


夕日が沈む。


辺りは暗くなり初めていたが、二人の笑い声は耐えることがなかった。
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