冬がとける日
二人が付き合い出して、初めてクリスマスが来た。


二人とも高校生で、
お金もなかったのだがお互いにプレゼントを買い、

駅前の少し高いレストランで食事をすることにした。


外は雪がちらついてる。


和美は雄一のために、セーターを編んでいた。


ベタかもしれないが、時間をかけて雄一のために世界で一つのプレゼントを渡したかった。


深いグリーンのアラン模様。

製作総時間2ヶ月。


何度も何度も編み直した自信作。


失敗作は全て父の腹巻きに姿を変えていた。



和美は雄一にセーターを渡す。


「ありがとう。オレ大切にするよ。」

雄一はうれしそうに笑う。


父が同じ色の腹巻きをたくさん持っていることは秘密。


「じゃぁオレからはこれ。」

雄一は小さな箱を取り出した。


和美は箱を開ける。


細い綺麗なプラチナの指輪が入っていた。


「へへへ。こんな細いやつでごめんな。
一年度に太いリングにしていくから。」


細いプラチナのリングは和美の左手薬指にピタリと合った。



「サイズ合って良かった。和美、指細いからブカブカかもしれないって不安だったんだ。
来年も再来年もそのサイズで指輪を送るから。どんどん太いプラチナになっていくから楽しみにしてて。」


雄一は照れて笑った。


「どんどんって…じゃぁいつかは指にはまらないくらいの大きさになっちゃうじゃない。」


和美は細い針金みたいな指輪を眺める。


「ああ、そうだよ。
楽しみしてろって。」


二人は幸せな時間を過ごしていた。

多分、お互いの人生において一番大切な時間を。
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