冬がとける日
日記はそこで閉じられていた。


母の意外な過去。

いや必然的な過去なのかも。


母が父を好きでないことくらい百も承知だったが、


まさかこんな昼ドラみたいな展開だとは。


まぁ母の日記なのだから、少しくらい脚色してるかもしれない。



日記の箱の近くに、古い綺麗な宝石箱を見つけた。


中には、プラチナの指輪が6個とダイヤの指輪が1個。


昔見た指輪はこれだったのかと感じる。


あの、六股をかけられていたことが判明した時に指輪をみて感じた既視感は、

この指輪だったのだ。


小さいころいたずらをしていて母に怒られた思い出が蘇る。


あの時の母はこれまでのどの母より怖かった。



二冊ある「津軽」の謎も溶けた。


一冊は雄一さんという人のものなのだろう。


そして、この日記の中に書かれている20年後とは、日記の日付から考えて2年前のことだった。


母はどうしたのだろうか。

雄一さんと会えたのだろうか。


いつも、赤いマールボロを吹かす母からは想像も出来ないほど、
乙女チックな約束だったが、

約束が守られていて欲しいと強く感じた。


そして私は決意する。


母の目が光りを失う前に、雄一さんに会わせてあげると。
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