冬がとける日
同窓会室…


名前だけ見ると、まるで部屋のようだが、

部屋というには粗末すぎる、
旧棟2階の一番奥に存在するその部屋は、
もう何年も日光が差し込んでいないと思わせるくらいジメジメと暗かった。


「失礼します。」


正樹を連れだって部屋に入った私。


部屋の奥には、
置物かと思うくらい動かない、初老の男性がたっている。


果たして同窓会室が必要なのか、
そしてそこに人員を割く必要があるのかと言われかねない、
刷新されやすい部署。
そこのボス兼、助手兼、秘書兼、部下をやっているのが初老の男性・橋本礼次郎名前だけやたら立派だが、
ただの雑用・離れ小島のおっさんである。


しかし頭は切れる(ボケていない)らしく、

個人情報の持ち出しに関しては死ぬほどうるさい。


そこで正樹の出番だった。


「何かご用ですか?」
橋本礼次郎は立ち上がらずに訪ねる。


確かに目は鋭い。



「はい。あのこの度、一高から本学に進まれた方を対象に同窓会を行おうと思い、是非橋本先生にご教示願えないかと思い、
参りました。」


最後にニコッと微笑む。


雄一は何がなんだがわからない様子。


「おや、一高の方を対象に。
そうですね、そういうことなら一高の代表者の方、その他先生方をの紹介状をお願いしたい。
あるかね?
それに君は女の子。確か一高は男子校じゃなかったかい?」


やはりこうくるか。

くそ。

こうなりゃ、はったりだ。

どうしても竹下雄一の所在地が知りたい。


「紹介状ですか。紹介状はありませんが、
代表者がここにおります。在学生の中では彼、千駄ヶ谷正樹くんが代表です。
また卒業生からは竹下雄一さん、白須孝治です。
二人とも約20年ほど前の卒業生です。
今日、私がこちらにお伺いしているのは、白須孝治が私の父だからです。
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