[妖短]夢幻寺
***
「…眠れないので?」
「あぁ、」
夜も更け、最早時間も分からなくなって来た刻、和尚がそう言って訪ねて来た。
客間で眠れずにがさごそやっていたから、心配してやって来たのだろうと咲重郎は思った。
和尚は、別段男前と言った訳でもないが、何となく可愛いげのある男だった。
「それはいけない。どうです、ひとつ、話でも。」
「……?」
「ここの所なかなか話し相手に恵まれなかったものでねぇ。なに、老いぼれの昔話ですよ。」
老いぼれ、と言うには、和尚は若い様に思われる。
肌や髪は艶があり、声にも張りがある。落ち着いた物腰は、かえって好ましい程だ。
何にせよ、自分も心細かった故、和尚の提案は有り難かった。
その旨を告げると、和尚は目元に柔らかい微笑を浮かべた。
「…眠れないので?」
「あぁ、」
夜も更け、最早時間も分からなくなって来た刻、和尚がそう言って訪ねて来た。
客間で眠れずにがさごそやっていたから、心配してやって来たのだろうと咲重郎は思った。
和尚は、別段男前と言った訳でもないが、何となく可愛いげのある男だった。
「それはいけない。どうです、ひとつ、話でも。」
「……?」
「ここの所なかなか話し相手に恵まれなかったものでねぇ。なに、老いぼれの昔話ですよ。」
老いぼれ、と言うには、和尚は若い様に思われる。
肌や髪は艶があり、声にも張りがある。落ち着いた物腰は、かえって好ましい程だ。
何にせよ、自分も心細かった故、和尚の提案は有り難かった。
その旨を告げると、和尚は目元に柔らかい微笑を浮かべた。