大切なもの
俺はポッケから携帯を取り出しながら、
「電話するか。」
と言った。
そしたら、俺の腕に花梨の手が触れた。
俺はわけがわからずに、
花梨の目を見た。
すると、
花梨は少しだけ恥ずかしそうに下を向いていた。
そして、
何を言おうとしたのか、
「……、…くて……ーよ。」
と、小さな花梨の声が聞こえた。
でも、下向いてるのと、
花梨の声がめっちゃ小さかったのとが重なって、
ほとんど聞き取れなかった。
「ん??ごめん。なんて??」
俺はそう言って花梨に耳を傾けた。
「電話、かけなくていいよ。」
って、さっきよりは大きくなったけど、
やっぱり小さい声で花梨は言った。
顔を覗き込むと、
恥ずかしそうに、更に顔を伏せた。