笑顔
でも私は婚姻届にサインしなかった。

というか出来なかった。

純ちゃんの

この先の人生を

この紙で縛りたくなかったから。

純ちゃんは若い。

私が居なくなって時間がたてば心の傷も癒えるだろう。

そしてまた誰かを愛してほしいから。



でも…正直に言えば私だけを愛してほしいけど、そんな事言えない。

私は鉛筆で婚姻届にサインをした。

そして消しゴムで綺麗に消した。

私の心の中では婚姻届を出したつもり。

現実には出すことのできない婚姻届を見つめて泣いた。

私が生きてきた中で一番幸せで一番辛いことだった。
< 211 / 230 >

この作品をシェア

pagetop