パフュームに繋がれて-2人の賭けゴト-
マンションに到着して、ロックを開錠して、ドアノブに手を掛けた。
もう此処は2人の家だって、言ってくれるのにね…――
リビングへ向かえば、ジャケットを脱ぎ捨ててネクタイを緩めて寛ぐ彼の姿を捉えた。
「あっ、ただいま…」
「お帰り、珍しく遅いな?」
「え…と、紗枝とお茶してたら話し込んでて。
ご飯まだですよね?ゴメンなさい…」
話しながらコートを脱いで、ソファに掛けるようにして置いた。
“ただいま”と“お帰り”――
社会人になってから、念願の1人暮らしを始めていたけど。
こうして迎えてくれる人がいて、電気が点いてるという日常が。
凄く幸せだと改めて気づいた、彼との生活――
なのに身構えてしまう自分に邪魔をされ、今日も敬語は抜け切らない。