Nameless M
もちろん、そこにはタネがある。

例えば大翔が体当たりを食らっても無傷なのは、攻撃が当たる直前に、打点をずらす、自ら後方に飛ぶ、しっかりと受け身を取るという作業を行ったからに他ならない。

当然、あの一瞬でこれだけの作業は常識的に不可能だ。

不可能ゆえに、そこには非常識な手段が介在している。

知覚強化の魔法。それがタネだ。

人間は五感で様々な情報を収集している。

視覚は映像。聴覚は音声。嗅覚は臭いといった風にだ。

誰もが当たり前のように利用しているこの機能には、実は欠点が存在している。

情報過多だ。

五感からの情報というものは、全て合わせたとき人間の処理能力を越えてしまう。

例えば、聖徳太子のように10人の話を同時に聞こうとするとどうなるか?

誰がなにをいっているのか分からなくなるだろう。

これは、脳の処理能力を聴覚情報が上回り機能しなくなった例だ。

同様の現象があらゆる感覚に起きる。

だから脳はそれを防ぐべく様々な機能を有するのだ。

モーフィングクイズというものがある。

1枚の絵が徐々に部分的変化をしていき、どこが変わっているのか当てるクイズだ。

これも、そんな脳の働きを利用したクイズである。

脳は、常に変化していく情報を全て知覚していてはフリーズを起こしてしまう。

そうならないように、脳はまず大雑把に全体を把握して情報量を減らすのだ。

例えば、車好きの人からすれば全然違う車でも、普通の人からは同じにしか見えない。

そういった経験は誰にもあるだろう。

これは、車好きは細部まで情報を認識しているが、普通の人は全体像しかみていないから起こることだ。
< 10 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop