Nameless M
だが、問答無用で男は追撃をかける。

凪ぎ払うような裏拳。

大翔はバック宙で距離をとり、回避した。

着地と同時に2発発砲。
弾は狙いたがわず心臓と頭部を襲う。

「効かぁああああん!」

だが2発とも弾丸は男の体に当たると跳ね返った。

再度男が飛びかかる。

わずか1歩。

コンマ数秒で大翔の位置に地をも砕く拳が到達する。

半身になり、前髪を拳圧で揺らしながらも、大翔は避けた。

男の懐に潜り込み、銃身で相手のこめかみを殴り付ける。

鉄板を殴ったような感触に大翔の手が痺れた。

「ぐお!」

男は至近距離から大翔に向かってダッシュする。

体当たりだ。

踏み込むだけで地が割れるその足は、瞬発力だけでも、人を壊すに十分な威力を持つ。

紙のように吹き飛ぶ大翔。

背中かな地面に落下した。

「くく……。どうだ、これが僕の力だ!」

「…………」

勝利の雄叫びを、大翔は大の字になったまま聞いた。

その声には、確信に満ちていて、1欠片の弱気も感じられない。

「つまんねぇ」

大翔はそう呟いた。

小さすぎたため男の耳には届かなかったようだが、その一言には本心のみが持つ力があった。

「よっ!」

「なに!」

掛け声1つで大翔は立ち上がる。

男が驚愕のあまり呆然としているのを尻目に、大翔は軽く肩を回すなどして調子を確かめた。

特に異常は見られない。
「バカな! 僕の攻撃を直接食らったのに! お前、どんな魔法を使ったんだ!」

半狂乱になる男。

仕方がないだろう。先程までの自信が見るも無惨に砕かれたのだから。
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