ラバーズキス
乗り慣れていない助手席に緊張しながら、小さく「お邪魔しま~す」と言って座ると、後ろからエミナが抱きついてきた。
「会いたかったよ~っ」
「あたしもだよ~っ」
あたしは後ろを向いてエミナのおだんごをぽんぽんと叩いた。
「りん、ちゃんと食ってるか?痩せたんじゃね?」
「ちゃんと食べてるよ。大哉、髪の色変わった?なんか感じが違う」
「エミナに染めてもらったらこんなになったんだよ」
「こんなってなによ!」
文句ある~?と大哉に絡むエミナ。高校の頃に戻ったみたいだった。
「車、出すぞ」
アツシは短く言うと、運転し始めた。エミナと大哉はまだギャーギャー言い合ってる。あたしは前を向いて座り直した。
「どこに行くの?」
「和希の大学の近くで飯食えるとこ」
車はすでにあたしの知らない道を走っていた。
「道知ってるんだね。こっちにはよく来るの?」
「たまに。仕事で来ることもあるし」
「今日は仕事は?」
実習が遅くなったとは言え、やっと5時になったところだった。仕事ってこんなに早く終わるものじゃないんじやないのかな…と思った。
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