ラバーズキス
「パーマしてるし、化粧もしてる」
あたしは力が抜けた。
「なんだ、そんなこと…」
「前の方が良かった」
「へ?」
アツシの意外な言葉に驚いた。
「パーマじゃないほうが良かった」
アツシはあたしの頭をぽんぽんと叩きながら言った。
「これ、パーマじゃなくて巻いてるだけだから、洗ったら元に戻るよ」
「なんだ、そっか」
それならいいやと言って、さっさと行ってしまった。ぽかーんと立ち尽くすあたしに、アツシは振り返って
「りん、来いよ」
と言った。
アツシに初めて名前を呼ばれて、あたしの心臓は大きな音をたてた。




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