ラバーズキス
大哉の部屋では男三人がバイク雑誌を読みふけり、あたしとエミナはコンビニで買ってきたプリンを食べながらしゃべっていた。
「引っ越しの日、決めた?」
「来週に荷物運んで、片付けするのに何日か泊まってこようと思ってるの」
「え~っ、来週?!」
エミナが大きな声を出して立ち上がった。大哉達はもちろん、あたしもびっくりした。
「なんでそんなに早く…」
「荷物運んで二・三日行ってくるだけだよ。すぐに戻ってくるよ」
あたしは立ったままのエミナの腕をつかんで慌てて説明した。
「ホントに?!」
良かったぁ~と笑いながらエミナは座った。
「りんちゃん、どこか行くの?」
話を聞いていた和希が口を開く。
「隣県の大学に行くから春から一人暮らしするんだよ」
大哉が和希に言う。
「そういえば、和希も隣県の大学じゃなかったっけ?」
「そうだよ。K大の2回生。りんちゃんはどこの大学?」
和希があたしとエミナの近くに座った。
「S芸大に行くの。住むのも大学の近くで…。てか、和希くんは年上なの!?」
「あれ?言ってなかった?和希とアツシは俺らより2歳年上」
大哉が言った。
「S芸大だったら僕の大学と近いね。僕は隣市に住んでるからバイクで通えるんだ」
「りん、良かったじゃん。和希くんが近くにいてくれたらわたしも安心だわ」
エミナが言った。
あたしも、面倒見の良さそうな和希の大学と近くて、少しホッとした。

< 6 / 64 >

この作品をシェア

pagetop