ラバーズキス
バイトがあるからと和希が先に帰り、大哉の家にお泊まりのエミナを残して、あたしはアツシと一緒に家を出た。あたしの家は大哉の家の隣駅だけど駅から遠いから、近道しながらいつも歩いて帰っていた。
「りん、今日は一人で帰らせてごめんね。帰ったら絶対メールしてよ!」
心配だよ~とエミナが抱きついてきた。
「大丈夫だよ!エミナは心配性なんだから」
あたしはエミナのおだんごをヨシヨシした。
「アツシ、りんを駅まで送ってやって」
大哉がタバコをくわえてるアツシに言った。
「近道しながら歩いて帰るから平気だよ」
あたしは慌てて大哉に手を振りながら言った。
「ダメ」
エミナが睨む。
「送ってくよ」
タバコを吸い終わったアツシがバイクを押しながら言った。
「バイクには乗せれないから歩きだけど」
「まだ誰も乗せてねえの?」
大哉が呆れたように言った。
「アツシね、彼女と別れてから誰も後ろに乗せないんだって」と、エミナがこっそり教えてくれた。

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