ラバーズキス
バイクを押すアツシの足が止まり、あたしの方を驚いた顔で見た。
ヤバい!変なこと言っちゃった…と思っていると、
「振られたんだよ」
と、アツシが言った。
「離れてるのは嫌だって」
「遠距離だったの?」
「そ。俺もあいつも仕事あるし、会いに行けるのは月一だし、寂しいって言われた」
「そっか…」
アツシの話す表情から元カノのことをすごく好きで大切に思ってた気持ちが伝わってきて、あたしまで切なくなった。あたしも大学が決まった時に元カレから同じことを言われて別れた。
「そんな顔するなって」
アツシがあたしの頭をくしゃくしゃしながら顔を覗き込んだ。柔らかい笑みを浮かべた顔に、あたしは頬が熱くなるのを感じた。



< 9 / 64 >

この作品をシェア

pagetop