killer
発端
 そこは天国だった。
 ジリジリと照りつける太陽の熱から逃れ、クーラーのきいた涼しい車内へと乗り込む。たくさんの荷物を抱えていたうえ、今夏一番の最高気温という中でわざわざバス停までやってきたのだ。四人は髪の毛まで濡らすくらい汗だくだった。そんな四人にとって、そこはまさに天国なのだ。
 四人――『城崎裕也』『梨本亮祐』『戸田香苗』『佳澄桃』は、現在中学二年生。幼稚園からの付き合いで、小学校も一緒だった。彼らは色々なところへ出かけるのが好きで、小さい頃から親にせがんで四人で色々なところへ旅行に行った。今日もいつものように旅行へいくところなのだが、いつもとは違って新鮮な気分で迎えていた。今までは親が一緒だったが、今日は四人だけだった。中学生になったということと、携帯を四人全員が持っているということで許されたのだ。費用は四分の一は自分達で出して、残りは親に負担してもらった。高校生になったらバイトして返すという条件で。
 今回のプランは、山の中腹あたりにあるペンションへ七泊八日でいくということだった。山自体も美しいが、なんといってもそこに隣接する海が一番だ。夏なので海水浴もできるし、夜は灯台に照らされた海を見るのも一つの楽しみとしてなるだろう。旅行の計画を練っている、ちょうど五月頃に雑誌で見つけて、全員一致で決めた場所だ。きっと楽しくなるだろう。
 イベントは二日目の山登りや、四日目のミニ水泳大会など、結構充実している。とくに水泳が大の得意という亮祐は、そのミニ水泳大会を楽しみにしている。香苗は三日目の夕食後にある演奏会を楽しみにしているし、逆に桃はどのイベントに対してもやる気だった。
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