killer
 一番後ろの席は幸い開いていて、四人はそこへ乗り込んだ。人が一人通れるスペースの狭い通路を通って、長いすへ座る。途中既に乗っている客を見てみた。若い人や中年の人が多かったが、ほとんどの人の周りが重苦しい雰囲気だった。団体というか、見知った人ときている人は少なそうだ。大抵の人が一人で座っていて、窓枠の辺りに肘をついて天井を見つめていた。亮祐が裕也に耳打ちをする。
「なんだ、えらく暗いよな」
「んーまあ……眠いんだと思っとけ」
 現在は八時半、大して早いわけでもないが、亮祐はとりあえずそう思うことにした。
 席について十分、やせ細った男が乗り込む。その直後、扉が閉まった。エンジンが改めてかかると、ツアーコンダクターが席を立って一礼する。
「おはようございます、皆様。当ツアーにご参加いただき、まことにありがとうございます。ツアーコンダクターの皆川と申します」
 女性――皆川は再び一礼をした。彼女が次に口を開いた時、バスが静かに動き出すのがわかった。
「まずは当ツアーのご説明をさせていただきます」
 彼女はすぐ隣の机に手を伸ばし、紙を手にとった。それを見ながら、丁寧に説明していく。しかし、未だに頭から湯気の出ている裕也たちに、その説明は全く頭にはいっていなかった。だがそれはまだ可愛いもので、車内に漂う重苦しい雰囲気がツアーコンダクターを困らせているようだった。一通り説明をしたところで、そそくさと席についてしまう。
 四人はその空気をぶち破るかのように、大きめの声で会話を始めた。
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