[短]花びらが落ちる瞬間
花びらが落ちる瞬間
いつもとは違う朝の通勤路。
いつめより早めに家を出てみれば、あまりに綺麗なグラデーションを描く青空に、吸い込まれてしまったのだと思う。
普段は無意識に避け、通ることなんてなかったサイクリングロード。
昨晩降り続いた雨は何処かへ行ってしまったみたいで。
天を仰げば真っ青で、所々に浮かぶ白い綿。
昨日の土砂降りが嘘のように、良く晴れている。
なのに、ふわっと吹く春の風はまだ冷たい。
舞って乱れた髪を手梳で整え、スプリングコートの袖の中に手を隠す。
ポカポカとする陽気と、ひんやり肌に付き刺さる風は明らかにバランスが悪過ぎる。
思わず肩を竦めた。
4月下旬、北の大地はまだまだ肌寒さを感じる。
…もう、1年になるんだ。
時が過ぎるのはあっという間。
…そう考えるのは。
視界に飛び込んで来たサイクリングロードを囲む様に、所狭しと淡い桃色の装飾が施されているから。