[短]花びらが落ちる瞬間

窓を開け放していた部室に飛び込んで来たサッカーボール。

『…すいませーんっ!大丈夫でしたか!?』

慌て駆け寄って来たサッカー部の男の子。

『あっははっ!慣れたよ、ほんとに。はいよっ!』

部長は笑いながら投げ込まれたボールを手渡して。

『ほんとすいませんでしたっ!!』

頭を軽く下げた彼が、上を見上げた瞬間、目が合った。


ドキンッ…。

と、胸のずっと奥で音を立てた。



『グラウンドから…美術室が良く見えて…その…。1年の時からずっと気になってて…。同じクラスになれて…マジでヤバイって思った…。
好きなんだよね、付き合って欲しい』

そう言った真剣な表情に吸い込まれて行った。



美術部だった私。

部室の窓から覗くグラウンド。

必死に走る彼の姿。

何処までもボールを追いかける姿。

仲間達と笑い転げる彼。

厳しい練習でも根を上げない真剣な姿。

白いタオルで汗を拭い。

豪快に飲み干すスポーツドリンク。

時折合わさる視線に、騒ぎ立てる心臓。


別に私を見ている訳ではない。

話しなんてしたこともない彼を勝手に想い続けた私。



初めて想いが通じたあの日。

2年前の今日…。


薄いピンク色の桜の花びらが落ちる瞬間…。


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