[短]花びらが落ちる瞬間
『な、何か照れ臭くない?』
恥ずかしがる私に、何食わぬ顔をする伸ちゃん。
『いいから、早くっ』
『…やっぱ無理っ』
と言って、目を背けた私の頬は熱かった。
『んじゃ、俺も呼ばない』
伸ちゃんのふて腐れたような表情。
『そんな急にはっ、無理っ…』
『ほら、呼んでみって。一回呼べば楽になるって。な?』
そう優しく言ってくれたから。
『……し、伸…ちゃん』
ようやく発した声は本当に小さくて、恥ずかしかった。
『ちゃんはいらなくね?』
と、悪戯な笑顔をさらけ出す。
『だっ、だって…』
両手の人差し指をもじもじとくっつける私に。
『…美紀。好きだよ』
確かに、そう言った。
だから…。
『私も…し、伸ちゃんが好き』
笑い合う遠い日の2人。
あのベンチで、初めて名前を呼び合った日…。