[短]花びらが落ちる瞬間
 
あの桜の木の下。

あのベンチの前で。

笑い合い、語り合い、悩み合い、慰め合った2人の影は何処を探してもいない。


3年前の今日、実を結んだ恋に…。

1年前の今日、終わりを遂げた。


泣くことも…。

喚くことも…。

引き止めることも…。

何一つ出来なかったのは、心の奥底で何となくわかっていたから。


いつ別れを告げられるのか…びくびくしていたから。


泣けば泣いて、泣き叫べば叫ぶ程、惨めで。

胸が張り裂けそうになるのを必死に抑えて…。


…そして。

『今まで、ありがとう』


目頭が熱くなるのを我慢して、言えた一言。

きちんと笑えてたかな…私。


あれから…この場所に足を運ぶことはなかった。

避けるかの様にぱったりと途絶えた。


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