ダンディ★ライオンの秘密の恋愛講座
冷静に、現象を解析すれば、それは人間の『恋』に近いような胸の痛みだったけれど、まさか、ね。
機械が、本当に恋愛感情を持つわけないし。
わたしは、いつまでも、溢れてくる涙をぐぃ、と拭いて聞いた。
「ねぇ。
明日からのお仕事ってなんでしたっけ?」
「ん?
ああ、今度は、八十才くらいの婆さんの役だったんじゃないか?
ん……と、名前は確か『山田 トメ』とか言ったかな……?」
「その役作りを早くしたいです。
今から明日の役用に、身体をカスタムチェンジ出来ますか?」
そんなわたしの希望に、技術さんは、ちょっと目を見開いた。
「今から?
これから、当分、婆さん役が続くから、美鈴みたいな綺麗な格好では居られなくなるのに?」
何だかんだ言っても結局、誰かの代役なんだからそんなに気合い入れて演んなくても良いのに、と。
ぶつぶつ言ってる技術さんに、わたし、とびきりの笑顔を見せた。
「だって、わたし、女優ですから。
動けなくなるまで、沢山。
いろんな役を、力一杯演じて行きたいです……!」