ダンディ★ライオンの秘密の恋愛講座
 少し前までは、わたしも。

 そんな強く演技をしたい、とは思っていなかったのに。

 いきなり、どうして。

『女優』として頑張りたいって思ったんだろう?

 判らないけれど、ま、いいや。

 演技をし続けて行くこと。

 代役専門とはいえ『女優』であること。

 それがわたしの存在理由なんだし。

 急なわたしの申し出に、技術さんも驚いたみたいだったけれど。

 特に文句を付けるわけでもなく。

 明日の用意を手伝ってくれた。

 わたしは、二十代の女性から、一気に六十年の時を超える。

 長かった手足を縮めて、腰を曲げ。

 身体中に年輪のようにシワを刻み。

 そして、最後の仕上げ。

 次の女優と同じ顔になるために『美鈴』の顔を仮面のように脱いだ時。

 その脱いだ顔に、なぜか思わず見入ってしまって、変身の手が止まった。

 なんで、この顔を脱いだら、悲しくなったんだろう?

 これじゃ、誰とすれ違っても。

 わたしだってこと、に気づいてくれないな、なんて思ったんだろう?

 そう、ぼんやりしていたら、技術さんの声がかかった。

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