ダンディ★ライオンの秘密の恋愛講座
 本当は、強く否定が出来る立場なんかじゃなかった。

 だけども。

 刹那の言い方があんまり悔しくて、気がついたらわたし、声を上げていた。

「わたし、大丈夫です!
 もう、セリフは間違えませんから!」

 そんな、思わず言った必死な声に、刹那はすぃ、と目を細めた。

「セリフだけの問題じゃねぇんだよ。
 ここは、いろんなことがあった二人が、愛を再確認する大事な場面だってのに!
 優菜の演技じゃ、映画を観てくれる客のココロに響かねぇ。
 ……あんた、ちゃんとした恋愛なんざ、今までしたことねぇだろう?」

「……う。
 ま、まぁ……それは……」

 わたしは、女優なのよ!

 怖くて、そんなの出来るわけないじゃない!

 ……とは、言える雰囲気じゃなく。

 ただ黙っているわたしに、刹那は追い打ちをかけた。

「もしかして、あんた。
 恋愛イコールセックス~~みたいな。
 生物の生殖活動の前段階、とかって思ってねぇ?」

「思ってませんよっ!
 そんなコトは!」

 反射的に答えたわたしに、刹那は、ふん、と鼻で笑った。

「ま、最悪にマズイわけじゃねぇだけマシか?
 だったらこの俺が、直々に恋の手ほどきってやつをしてやるから。
 いい女になって、もう少しまともな演技しろよな。
 とりあえず、このシーンは後回し。
 セリフの間違いは、演技以前の問題だから、今日は午前中丸々台本(ほん)読んで、完璧に内容をおぼえとけ。
 ……あんた、暗記だけは、得意なはずだろう?」
 




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