ダンディ★ライオンの秘密の恋愛講座
 

 本当は、刹那が。

 綺麗なだけの俳優じゃないことぐらい、知ってる。


 ……

 もとは、スタントマンだったのに。

 あまりの美貌と演技力に、表に出ることになった、なんて。

 皆が知ってる伝説だもの。

 刹那は、わたしとの恋愛シーンの時よりも、生き生きと。

 自分の倍くらいの横幅がありそうな悪役の俳優さんと、とても楽しそうにカメラの前に立っていた。

 偽物、とは言え。

 限りなく本物みたいな刃物を振り回して、喧嘩するシーンも、へっちゃらだ。

 あーあ。

 順調な撮影を横目で見ながら、わたしはもう。

 何度も何度も読んだ、台本を更に読み返すしかなくて。

 もう、やたらめったら。

 つ~ま~ん~な~い~!


 とうとう、我慢出来なくなったわたしは休憩しようと、台本を放り投げた。

 ところが。

 台本は、狙ったコーヒーテーブルから外れて、地面に落ちてゆく。

 あ、台本が土で汚れる!

 と思ったそのとき。

 間一髪、わたしの台本を拾ってくれた男(ひと)がいた。

「いけませんよ、泉川さん。
 大事な台本を投げだしたりしては……」

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