VS~Honey~
俺もメンバーなのに、俺は美紗の言葉に含まれていない。
それに段々と腹が立ってきた。
美紗が誉めるのはメンバーであって、俺ではないのだ。
「ファンの子の気持ちがちょっとわかったよ……え?」
気が付くと俺は美紗の目の前まで行き、その腕を掴んでいた。
突然のことにキョトンとした顔で俺を見上げる。
「お前さぁ、忘れてるだろ。俺もMarsだっつーこと」
「え? そんなことないよ?」
「嘘つけ」
目が泳いでる。嘘が下手くそだ。
俺がむすっとしていると、美紗がたじろくようにそろそろと聞いてきた。
「えっと……なんで、怒ってるの?」
「怒ってはいない。ただちょっとムカついただけ」
「ムカついたって、どうして?」
どうかてって、それは……カッコ悪くて言えないし言いたくない。メンバーが褒められてんのに嫉妬したなんて美紗には意味がわからないし、その意味を今はまだ深く考えてほしくない。
情けない俺の嫉妬で美紗を困らせている状況にも余計に情けない気分になって、俺は美紗の腕をそっと離した。