VS~Honey~
「壁?」
「そう。壊れたら、直す自信がない」
幼馴染みとして築いてきた壁。距離感。もし、陸に気持ちを伝えてそれが報われなかったら、今まで築かれてきた距離や壁は修復できない。
自分の心を守る大切な壁でもあるのだ。
結衣は苦笑してうつむく。
いつもサバサバしている結衣が、こんなにも消極的になるなんて本当に陸が好きなんだろう。
下を向いていた結衣が、でもね、と明るく顔をあげる。
「私は陸の恋人ではないけど、“幼なじみ”っていう特別な枠にはいるから。これはわたしだけのものでしょう?」
「特別……」
特別か。
陸にとって結衣は幼なじみ以上に“特別”な存在だとは思うけど、それは私が言うべきことではない。
気持ちを伝えるって難しいね。