VS~Honey~

すると、結衣は話題の矛先をこちらに向けてきた。


「美紗は?」

「私? 何が?」

「佐々木晴紀の“特別”でしょう?」


この前の電話と同じこと言ってる。
なにを根拠に言っているのかわからない。


「だから、違うよ。そんなんじゃない」

「でも、美紗にとっては佐々木くんは特別な人じゃないの?」


私にとって?
ドキンと胸が鳴る。


「佐々木くんに、他に大切な人がいたら嫌じゃない?」


晴紀に大切な人?
結衣の言葉に心が動揺する。
そのくらいすでに居るのでは? でもその存在を考えようとすると胸がジワッと苦い気持ちになる。


「あ、考えこんでるね。
美紗はさ、もう少し自分の気持ちに素直になったほうがいいよ?」

「結衣に言われたくないよ」


私が口を尖らせると結衣はケタケタと笑った。

結衣だって本当は陸に気持ちを伝えたいはずだ。
ずっと幼なじみの枠なんて悲しすぎる。



< 120 / 211 >

この作品をシェア

pagetop