VS~Honey~
「ちょっと!」
驚いて離れようとすると、晴紀はそれを許さず私の腕を押さえて動くなと言った。
「いいだろ。ゆっくり出来るのも久しぶりなんだよ」
わかんないやつだな、とでも言うようなむすっとした言い方で言うが、こちらとしたらそんなこと言っても! どうすればいいの!? と頭のなかではパニックだ。
晴紀のキレイな顔がすぐそばにある。髪が頬をくすぐる。
自然と顔が熱くなり、呼吸の仕方がわからなくなる。
「やっぱりダメだよっ」
逃げるように立ち上がろうとしたら、晴紀が手を掴んで動きを止めた。
「行くなよ」
低く呟き、中腰の私を見上げてくる。
どうして?
胸がドキドキして、掴まれたところが熱い。
なぜ行くなよと言うのか。
なぜそんな切なげに私を見上げるのか。
その姿が側にいてと懇願しているように見えてしまうのは、都合の良い解釈なのだろうか。
「は、晴……『ピリリリ、ピリリリ』
晴紀の名前を呼ぼうとした時、突然携帯が鳴って言葉を遮った。
晴紀の携帯も鳴っていた。
私の表示は結衣で、急いで出てみると、少し興奮気味で、涙声だった。
しかし『陸に好きだって言われた』と歓喜で泣いていたのだ。
「本当!? 良かったね!」
嬉しくて晴紀を見ると、晴紀も私を見て笑顔でアイコンタクトを取る。そちらも陸からのようで、よくやった、などと話していた。