VS~Honey~

ーーーー


『ではルールを説明します。生徒の皆さんには赤いバンダナを腕に巻いてもらいます。制限時間内に、鬼役の先生、生徒会役員、各クラスの委員長に捕まり、没収されないよう逃げて下さい。場所は校舎内のみ。細かいルールはアチコチに掲示してありますので各自で確認するように』


体育館に集合し、全生徒たちはルール説明を受ける。壇上の校長は終始笑顔だ。
校長、楽しそうだな。
この校長は毎年この行事にだけかなり力を入れている。
そのぶん、他が多少緩いのは有り難いことだ。


『ちなみに、捕まらなかった生徒には評価アップ&一ヶ月学食無料サービスだ!』



ウオオオオオッ!! と歓声があがる。

育ち盛りの高校生には学食一ヶ月無料ってのは魅力的だ。
それに、評価アップも嬉しい特典で、悪い言い方をすれば、一年のうち今日だけ頑張ればあとは何とかなってしまう。
だからこそ、この行事に関してはサボる人もふざける人も少ない。


『では、健闘を祈る』


校長の合図とともに、生徒達は校舎内に消えていった。

この学校は私立なだけにかなり広い。
本館と別館二つだが生徒数に対し、敷地は広かった。

これは鬼役も大変だなと同情する。


「晴紀。美紗ちゃんから目を離すなよ」


陸がそうささやいて走り去っていった。

ハッとして見渡すが、大勢の生徒に紛れ、美紗の姿は見えない。目を離すなって言われたって、もうすでにいなかった。




< 134 / 211 >

この作品をシェア

pagetop