VS~Honey~
先生がじっと見つめてくる。“先生”の表情ではなかった。
どうして急にそんなことを言うのだろうか。
戸惑いが表情に出てしまう。
「先生、私……」
「教師が生徒に特別な感情を持ってはいけませんか?」
先生の声が低くなる。
「いけないとかじゃなくて……」
いや、本来はいけないことだ。でも、先生がふざけているようには見えないから言葉にしにくい。
先生が私を見つめたままゆっくり近づいてくる。私は金縛りにあったかのように動けなくなっていた。
「相川さん」
先生が私を引き寄せる。
咄嗟に離れようとするが、先生の方が私を捕らえるのが早かった。
「やっ! 先生、やだ」
「大きい声出すと、人が来ちゃいますよ」
諭すように先生の声は穏やかだが、私は腕の中で必死にもがく。
血の気が引くかのように身体が冷たくなるような感じがした。