VS~Honey~
頭のなかは完全にパニックだった。
「初めて会ったときから気になって仕方なかった。自然と目が貴女を追ってしまうんです。初めは生徒を好きになるなんて教師として最低だと思いました。僕は最低な教師だって。自分の気持ちを否定したし、考え直そうとした。でも、どうしても忘れられなかったんです」
「先生……」
「本当は貴女にこんなこと言うつもりはなかった。でも、僕には貴女と過ごす時間が限られてしまったんです」
「どういうことですか?」
「カナダの大学に数学の研究をしないかと誘われていて、秋に行くつもりです」
先生の告白に身動ぎしていた体が止まる。
え、先生、学校辞めるの?
「相川さん、僕ではダメですか?」
先生の切なげな声が耳元でする。
先生が教師らしからぬ態度で、急に迫ってきた理由がわかった。
でも、やっぱり私、先生の気持ちには答えられない。
「ごめんなさ……」
断ろうとしたとき、先生の手が頬にふれる。
ビクッと体が跳ねた。
「美紗さん」